混ぜっ返し方


もう数カ月前になるが、必要があってギターアンプのことを調べていた。なるべく小型で、家で使うのに適したものを探し、ネット検索を続けるうちに、2ちゃんねるの掲示板に行き着いた。ミニアンプの製品名をあげて、これは音がいいとかあれは使い勝手が悪いとか、意見を交換する。そのうちにある人が「このアンプはゆがみがいまいちだ」という趣旨のことを言った。それに対して別の人が「ゆがみじゃなくてひずみね」と返す。漢字で書くとどちらも「歪み」だ。あっという間に「ゆがみ」派と「ひずみ」派で論争になった。

素人の僕からすると、別にどっちでもええがな、という問題なのだが、ネット上の喧嘩は一度火がつくと止まらない。「ひずみなんて言うやつは周りにいない」「それはお前が下手だからだ」などと、言葉はエスカレートしていく。こっちはそんなことよりアンプの情報を知りたいのだが、困ったな、と思って読んでいたら、こんな人が現れた。

じゃあ俺はこれから「ねたみ」って読むわ。

第3勢力「ねたみ」が現れた。不毛な喧嘩に飽き飽きしていた人達は、一気に「ねたみ」派にまわった。「マーシャルのこれはねたみが凄い」「俺もそのモデル持ってるけど、あんまりねたまないな」などと、普通にギター用語として流通し始める。さらには「大型のチューブアンプに匹敵するそねみ」などと、さらりと第4勢力を混ぜたりする輩も現れた。楽しい。話題はまたミニアンプの意見交換に戻り、喧嘩は静かに消えていった。

こういう「混ぜっ返し」のうまい人が、ネット上にはときおり現れる。どちらの側にも立たず、その喧嘩の馬鹿馬鹿しさをさらりと気付かせてくれる人。きっと仕事も出来るに違いない。嫁は美人で家庭も平和、周囲からの信頼も厚いのだろう。いやあ、ねたむなあ。