■ 松濤美術館に「高島野十郎展」を見に行った。ろうそくの炎を描いた絵が有名な、いわゆる写実絵画の人だということは知っていたが、まとまった数の作品を見るのは初めてだった。とてもいい。思わず図録も買ってしまった。
どの絵もうまい。果実や静物画、風景画や人物画なども、それぞれにうまい。そしてどの絵にもあたたかみがある。他の写実画家とは決定的に違うのがそこで、それが肝と言っていいように思う。

■ 野十郎の絵は、画面の端から端まですべてにピントが合っている。ぼかしたり省略したりすることがない、ごまかしのない絵作りだ。「花一つを、砂一粒を人間と同等に見る事、神と見る事」というのは本人の言葉だが、まさにその通りと思う。特に花の絵からは、奇妙な極楽感が漂う。極楽で漂っているときに目にするのは、案外こんな光景なんだろうな、と思わせる。

■ 孤高の画家と呼ばれ、画壇とはほとんど付き合いのなかった人らしい。「端の方はラフに描け」とか「必要のないものはぼかせ」とか、いろいろ言われるのが嫌だったんだろうな。そうやってひとりキャンバスに向かい、できあがった絵にはそれなりの客が付き、没後には個展が全国に巡回し、大勢の客が見に来るようになった。僕もそのひとり。素晴らしき画家人生。












