音楽と世界の話


優れた若いバンドというのはいつだって素晴らしい。自分たちがいいと思うものを、一生懸命、まっすぐに表現する人たち。不景気とかSNS疲れとか芸能人の不倫とかは、彼らにとってはどうだっていいのだろう。彼らの見ている世界には、そんなことは存在しないに違いない。夜中に聴いていると、ちょっとだけ彼らの目を借りて世界を見ることができたような、そんな気持ちになってくる。


これは今の若いバンドに限ったことではなくて、昔の若いバンド(すなわち、今は歳を重ねた人たち)のビデオを見ても同じような気持ちになる。彼らがその頃に見ていた世界を、描いていた未来を想像する。世界はキラキラと輝いているだろう。これから何だってできると思っているに違いない。だって、こんな曲を、こんなビデオを作れたんだもの。俺たち、何だってできるさ。


もちろん彼らだって普通の人間で、不安は山程あるだろう。不景気とかSNS疲れとか芸能人の不倫とかが気になってしまう時だって、あるかもしれない。でもこれらの楽曲の中の彼らは、一生懸命でまっすぐで、そして彼らの見る世界は、キラキラと輝いている。
自分の目が曇ってきたなと感じた時は、飽きもせずに優れた若いバンドの曲を聴く。彼らの目を借りると、新しいコンタクトレンズを付けた時のように、視界がクリアになる。そんな気持ちになる。