フィレミニョンステーキをレアで


Amazon Prime で「ドラえもん映画40本見放題」キャンペーンが始まった。なにか見てみようと思い選んだのは「のび太の海底鬼岩城」だ。これはドラえもん映画の4作目で、夏休みに海底に遊びに行ったドラえもん一行が、海底人を巡るトラブルに巻き込まれる、というストーリー。原作の漫画を読んでいたこともあって、ふんふんなるほどと軽いタッチで見ていた。

この映画には印象的なシーンがある。夕飯に何を食べるか、それぞれ好きなものを言いなさい、とドラえもんが言う。のび太やジャイアンが、お子様ランチやカツ丼大盛りを注文する中、スネ夫がこう言うのだ。

フィレミニョンステーキをレアで。

私が原作の漫画を読んだのは小学生の頃だ。このフィレミニョンステーキというものがどういうものなのか、さっぱり分からなかった。出てきたステーキを食べ、「うまい!いい肉を使っているね」と言っていることから、それが「いい肉」であることは分かったのだが、食べたい夕飯を聞かれてすぐにこれを言えるスネ夫という人物に、私はいたく感動した。しかも、レアで食べている。

このセリフを知って40年近くが過ぎているが、いまだにフィレミニョンステーキは食べたことがない。いつか食べようと思ってはいるが、食べずに終わることもあるかもしれない。年老いた私は、臨終間際、最後に残った力を振り絞って、枯れた声でこう言うのだろう。

ああ、フィレミニョンステーキをレアで、食べたかった ...

ベッドを取り囲む親族は言うだろう。

なんて?