自然な態度/Still moving


先週、旧・崇仁小学校で開催されているアートイベント「still moving」を見に行った。これも国際芸術祭パラソフィアの関連イベントらしい。満開の桜並木をくぐり抜け、会場へ。

人もまばらな昼間の廃校というのは、静かで居心地がいい。これが夜になると一気に怖くなるのはなぜだろう。10組ほどの作家が展示をしている中、久門剛史のインスタレーションが良かった。誰もいない教室に、黒板にチョークで文字を書く音が響き、電球が明滅する。ときおり扇風機のスイッチが入り、カーテンがそよぐ。座ってぼんやり佇んでいると、かつての教室の記憶を辿っているような気持ちになる。
屋外展示の、ヘフナー/ザックスの作品も良かった(下の写真)。フェンスの張り巡らされた空き地に、ジャングルジムのようなものを建てて、プラスチックやらボールで作った植木鉢やらを吊るし、ちょっとしたパラダイスを作り出している。拍子抜けするぐらい、あっけらかんとしたムードが漂っている。

崇仁地区といえば、かつては京都最大の同和地区だった場所だ。久門剛史とヘフナー/ザックス、どちらの作品も、そんな地域の歴史を無視するでもなく掘り過ぎるでもない。ただそれに寄り添うように、作品が存在していた。当事者ではない人間が関わる上で、それがもっとも自然な態度であるように思える。場所や歴史、人間に対して「自然に」接する。僕にはなかなか、出来ないことなのだけれど。